管理職として働いていると、
「上から言われることと、現場でできることが合わない」
と感じる場面があります。
上司からは、
「もっと売上を上げてほしい」
「この期限までに終わらせてほしい」
「会社の方針だから進めてほしい」
と言われる。
一方、部下や現場からは、
「人が足りません」
「これ以上仕事を増やすのは厳しいです」
「現場ではそんな簡単にはできません」
という声が上がってくる。
どちらの言っていることも分かる。
だからこそ、間に立つ管理職は苦しくなります。
私自身も長く管理職として働いてきました。
管理職の仕事をしていると、
上司の要求を部下へそのまま伝えるだけではうまくいかない。
しかし、
部下の言い分をすべて受け入れるだけでも仕事は進まない。
そんな場面があります。
「上司にも事情がある」
「部下にも事情がある」
その両方が見える立場だからこそ、板挟みになるのだと思います。
私は、こうした板挟みを完全になくすことは難しいと感じています。
管理職という立場そのものが、会社の方針と現場をつなぐ役割だからです。
だからこそ大切なのは、
両方の要求をすべて自分で背負うことではなく、何を受け止め、何を伝え、何を上へ返すのかを整理すること。
いわば、仕事が前へ進むための交通整理のような役割ではないでしょうか。
この記事では、50代の管理職として働いてきた経験をもとに、上司と部下の板挟みになったときに私が考えていることをまとめます。
同じように中間管理職として悩んでいる方が、
「自分だけではない」
と少しでも感じられたり、今の状況を整理するきっかけになれたらと思います。
なぜ管理職は上司と部下の板挟みになるのか
中間管理職は、会社と現場のちょうど間にいます。
上司から見れば、
会社の方針を現場で実行する立場。
部下から見れば、
現場の事情を理解してくれる上司。
この二つの役割を同時に求められます。
会社としては、
- 売上
- 利益
- 納期
- 生産性
- 新しい取り組み
- 顧客への価値提供
などを求めます。
当然、管理職にはそれを実現するための行動が必要です。
しかし現場に降りれば、
- 人員
- 仕事量
- 経験
- 設備
- 取引先の事情
- 社員同士の人間関係
など、数字だけでは見えない問題があります。
ここが難しいところです。
上層部では、数字や結果を基準に判断する場面が多くなります。
一方、現場は人が動かす以上、数字だけでは割り切れない一人ひとりの事情があります。
上から見えている景色と、現場から見えている景色は同じではありません。
管理職は、その両方を見る立場になります。
だからこそ、
「上司の言っていることも分かる」
「でも部下の言っていることも分かる」
という状態になります。
私は、これが板挟みの一番苦しいところだと思っています。
どちらか一方だけが正しいとは限らない
板挟みになると、
「上司と部下、どちらの味方をすればいいのか」
と考えてしまうことがあります。
しかし、実際の仕事では単純に白黒をつけられないことが多いと思います。
たとえば上司が、
「もっと売上を上げろ」
と言ったとします。
会社として売上を伸ばさなければならないのであれば、その要求自体は間違いではありません。
一方、部下が、
「今の人数ではこれ以上難しいです」
と言ったとしても、実際に現場が限界に近いのであれば、その意見も無視できません。
どちらかが間違っているから問題になるのではなく、どちらにも事情があるから難しい。
管理職をしていると、そう感じる場面があります。
両方の要求を全部かなえようとすると苦しくなる
上司から求められたことは達成したい。
部下にも無理をさせたくない。
管理職として仕事をしていると、両方に応えたいと思います。
しかし、
すべての要求を同時にかなえることは難しい場合があります。
人を増やしたいと思っても、必要な人材を思うように確保できない。
設備を入れたいと思っても、予算がない。
期限を延ばしたいと思っても、取引先との約束がある。
管理職だからといって、何でも自由に決められるわけではありません。
それでも結果を求められる。
この状況が続けば、
「自分が何とかしなければならない」
という気持ちが強くなります。
私自身も、
「もっと良いやり方があるのではないか」
「自分の管理の仕方が悪いのではないか」
と考えることがあります。
しかし、現実には自分の権限だけでは変えられないこともあります。
自分で変えられることと変えられないことを分ける
板挟みになったときほど、
自分で変えられることと、自分だけでは変えられないことを分けて考える
ことが大切だと思います。
自分で変えられることなら、
- 仕事の優先順位を見直す
- 部下への伝え方を変える
- 業務の進め方を整理する
- 上司へ現状を説明する
- 必要な支援を求める
といったことがあります。
一方で、
- 会社全体の方針
- 人材採用の権限
- 大きな予算
- 取引先の事情
- 市場環境
などは、自分一人では変えられません。
変えられないことまで、
「自分の力不足だ」
と抱え込んでしまえば、苦しくなります。
管理職には責任があります。
ただ、責任があることと、すべてを自由に変えられることは別です。
上司の言葉をそのまま部下へ流すだけではうまくいかない
管理職には、上からの指示を現場へ伝える役割があります。
しかし、
「上から言われたからやってください」
だけでは、部下が納得できないことがあります。
部下からすれば、
「なぜ必要なのか」
「今の仕事とどちらを優先するのか」
「現実的にできるのか」
が分からないからです。
だから私は、管理職にはある意味で、
上司の言葉を現場向けに翻訳する役割
もあると思っています。
上司が何を求めているのか。
なぜその仕事が必要なのか。
現場ではどこまでできるのか。
何を優先するのか。
そこまで整理して初めて、部下へ伝えられることがあります。
部下の不満もそのまま上司へ返さない
これは逆方向でも同じです。
部下から、
「無理です」
「人が足りません」
「このやり方ではできません」
と言われたときに、その言葉をそのまま上司へ返しても話が進まないことがあります。
「現場が無理だと言っています」
だけでは、
「では、どうすればできるのか」
という話になります。
そこで、
- 何が一番問題なのか
- 人が足りないのか
- 時間が足りないのか
- 優先順位を変えればできるのか
- 期限を変えれば対応できるのか
まで整理する。
そして、
「現状ではここが問題です。この条件なら対応できます」
と上へ返す。
管理職は、上から下へ伝えるだけでも、下から上へ伝えるだけでもありません。
双方の言葉を整理し、相手に伝わる形へ変える。
板挟みの中で求められる仕事の一つは、そういうことなのではないかと思います。
板挟みは上司と部下の間だけで起きるとは限らない
ここまで上司と部下の間で起きる板挟みについて書いてきましたが、実際の仕事では、それだけではありません。
私の仕事は製造業に近く、部下だけでなく、実際に現場を動かす職人の方や元請けの工事責任者など、さまざまな立場の人と調整しながら仕事を進めます。
そこでは、上司と部下という上下関係とは少し違う難しさがあります。
それが、
年齢・経験・仕事上の立場が必ずしも一致しないこと
です。
私の部下は比較的若い世代です。
一方、実際に現場で仕事をしていただく職人の方には、その部下の父親と同じくらいの年代の方もいます。
さらに、元請け側の工事責任者も若い方であることがあります。
仕事上の立場では若い担当者が現場へ指示を出す。
しかし、年齢や現場経験では職人の方がはるかに上。
そうした関係の中で仕事を進めなければならないことがあります。
役職や立場だけで人が動くとは限らない
会社の組織図だけを見れば、
「担当者が指示を出し、現場がその指示に従う」
という形に見えるかもしれません。
しかし、人が動く現場はそれほど単純ではありません。
経験豊富な職人の方からすれば、自分より何十歳も若く、現場経験も少ない担当者から指示を受けることになります。
一方、若い担当者には、工事を安全に、予定通り進める責任があります。
どちらかが悪いという話ではありません。
年齢、経験、立場のねじれそのものが、意思疎通を難しくすることがあります。
若い部下が、
「自分が担当者なのだから言うことを聞いてもらって当然だ」
という姿勢になれば、うまくいかないことがあります。
反対に、
「若い人の言うことだから」
という理由だけで指示を受け入れてもらえなければ、現場を予定通り進めることが難しくなります。
こうした場面でも、管理職が間に入って調整する必要が出てきます。
若い部下と経験豊富な現場の間をつなぐ
ただ、管理職が毎回間に入って問題を解決するだけでは、若い部下自身が現場との関係を築けるようにはなりません。
私は、こういう場面も部下が人との関わり方を学ぶ機会の一つだと思っています。
そこで、部下に伝えていることがあります。
それは、
相手に敬意と愛情を持って接してほしい
ということです。
ここでいう「愛情」は、何でも相手の言うことを受け入れるという意味ではありません。
相手を一人の人として見て、
「なぜ、この人はこう言うのだろう」
と理解しようとする姿勢です。
相手の年齢。
これまでの経験。
現場で積み重ねてきた知識。
仕事に対する考え方。
そうした背景を知ろうとすることで、こちらの伝え方も変わってきます。
私は部下に、
「なぜそのようなことを言うのか」
「なぜそのような行動になったのか」
「その人は自分に何を求めているのか。何をしてほしいのか」
を、一度考えてみてほしいと伝えています。
相手を深く理解しようとすれば、使う言葉も変わります。
指示するだけではなく、
「なぜこの作業が必要なのか」
「相手がどこに納得していないのか」
を考えて話せるようになります。
そうしたやり取りを繰り返すことで、少しずつ信頼関係ができていくのだと思います。
相手を理解することは、これから管理職になるための経験にもなる
私は、この経験は目の前の工事を進めるためだけのものではないと思っています。
年齢も立場も経験も違う相手と仕事をする。
自分の言うことを聞いてくれない相手に対して、
「なぜ分かってくれないのか」
だけで終わらず、
「相手にはどんな事情があるのだろう」
と考える。
これは、将来その部下が管理職になったときにも必要になる力だと思います。
管理職になると、自分と同じ考え方の人だけを相手にすることはできません。
さまざまな世代。
さまざまな価値観。
さまざまな立場。
その間に立って仕事を進めることになります。
だからこそ若いうちから、
まず相手を理解しようとすること。
そこから始める経験をしてほしい。
私は、そう考えながら部下と接しています。
管理職はさまざまな立場をつなぐ役割でもある
こうして考えると、管理職が板挟みになる相手は上司と部下だけではありません。
仕事によっては、
- 上司
- 部下
- 取引先
- 元請け
- 協力会社
- 現場で働く人
など、多くの人の間に立つことになります。
それぞれに立場があります。
経験があります。
守らなければならないものがあります。
だから、全員の希望をそのまま実現することはできません。
管理職には、
「誰が正しいかを決める」よりも、それぞれの事情を整理して仕事が前へ進む場所を探す
ことが求められる場面も多いと思います。
もちろん、いつもうまくできるわけではありません。
伝え方を間違えることもあります。
後になって、
「もう少し別の言い方があったかもしれない」
と思うこともあります。
それでも、誰か一人の言い分だけを見るのではなく、全体を見ながら調整していく。
私は、板挟みになったときにそのことを意識しています。
部下を守ることと、何でも受け入れることは違う
管理職として働いていると、
「部下を守らなければならない」
と思う場面があります。
私もそれは大切なことだと思っています。
現場の事情を知らないまま無理な要求が下りてきたとき。
部下に明らかに大きな負担がかかっているとき。
本人だけでは上へ伝えにくい問題があるとき。
そんなときに、管理職が現場の状況を上司へ伝えることは必要です。
しかし、部下を守るということと、
部下の言うことをすべて受け入れること
は違います。
部下の意見がいつも正しいとは限りません。
経験が少ないから見えていないこともあります。
自分の仕事だけを見れば無理に感じても、部署全体で考えれば必要な仕事もあります。
ときには、
「それはやらなければならない」
「ここはもう一歩頑張ってほしい」
と伝えなければならないこともあります。
大切なのは、上司から守ることでも、部下の味方になることでもありません。
なぜその仕事が必要なのかを自分なりに理解し、必要なことをきちんと伝えること
だと思います。
厳しいことを伝えるときほど理由を説明する
人は、理由の分からないことを一方的に求められると納得しにくいものです。
「会社が言っているから」
「決まったことだから」
だけではなく、
なぜ必要なのか。
何を目指しているのか。
今やらなければ何が起きるのか。
その中で、こちらも何を支援できるのか。
そこまで説明する。
それでも納得してもらえないことはあります。
しかし少なくとも、
管理職自身が何も考えずに上からの指示を流しているわけではない
ということは伝わります。
部下との信頼関係は、こうした小さなやり取りの積み重ねでも作られていくのではないでしょうか。
上司にも現場の現実を伝える
管理職は、上司の要求を現場へ伝えるだけではありません。
現場で本当に起きていることを、上司へ返す役割もあります。
「現場に言っておきます」
ですべてを引き受けてしまえば、一時的には話が早いかもしれません。
しかし、実際にはできないことまで引き受ければ、後から苦しくなるのは現場です。
管理職自身も、
「約束したのだから何とかしなければ」
と追い込まれます。
だからこそ、
できることはできる。難しいことは難しい。
その理由も含めて伝える必要があります。
ただ、
「無理です」
だけでは話は進みません。
たとえば、
「現在の人員ではこの期限までにすべて終わらせるのは難しいです。ただし、この部分を優先すればここまでは対応できます」
「この条件を変えてもらえれば対応できます」
というように、
現状と、できる条件をセットで伝える。
私は、これも管理職に必要な仕事だと思っています。
上司に意見を返すことは反抗ではない
上司へ現場の問題を伝えるとき、
「反対していると思われないだろうか」
と考えることもあると思います。
しかし、現場を見ている管理職が何も言わなければ、上層部には現実が伝わりません。
もちろん、伝え方は必要です。
感情的に、
「現場のことを何も分かっていない」
と言っても、話は前へ進みにくくなります。
事実を整理して、
- 何が問題なのか
- どんな影響があるのか
- 何ならできるのか
- 何を支援してほしいのか
を伝える。
管理職は会社の方針を現場へ伝える立場であると同時に、現場の現実を会社へ伝える立場でもあると思います。
板挟みになったときほど一人で全部抱え込まない
それでも、どうすればいいのか分からないことはあります。
上司の言っていることも理解できる。
部下の事情も分かる。
現場にも言い分がある。
自分なりに考えても、どの判断が一番いいのか答えが出ない。
管理職をしていれば、そういう場面もあると思います。
そんなときまで、
「管理職なのだから自分一人で答えを出さなければならない」
と考える必要はないと思っています。
別の管理職に話してみる。
信頼できる上司に相談してみる。
会社と利害関係のない人に話してみる。
誰かに話すことで、自分の考えが整理されることもあります。
管理職になると相談を受ける立場になる一方、自分自身の相談相手を見つけにくくなることについては、こちらの記事でまとめています。
→ 関連記事:管理職は相談相手がいない?50代で感じる話しにくさと相談先
相談することは、判断を誰かに丸投げすることではありません。
違う角度から見てもらい、
最後に自分で判断するための材料を増やす。
そう考えれば、管理職にとって相談することも仕事を進めるための一つの方法になると思います。
まとめ|板挟みになったときは全部を背負わなくてもいい
上司と部下の間に立つ管理職は、板挟みになりやすい立場です。
上司には上司の事情があります。
部下には部下の事情があります。
さらに実際の仕事では、取引先や協力会社、現場で働く人など、多くの人の事情が加わります。
そのすべてを同時にかなえることはできません。
だからこそ、
- 自分で変えられることと変えられないことを分ける
- 上司の言葉をそのまま流さず、現場へ伝わる形にする
- 現場の声も整理して上司へ返す
- 相手の立場や背景を理解しようとする
- 必要なら誰かに相談する
ことが大切なのだと思います。
管理職は、誰か一方の味方をするだけの立場ではありません。
さまざまな立場の人の間に入り、仕事が前へ進む場所を探す。
その役割も管理職にはあると思っています。
そして、それがいつもうまくいくとは限りません。
迷うこともあります。
判断を間違えることもあります。
後悔することもあります。
それでも、全部を自分一人で背負う必要はありません。
目の前の状況を一つずつ整理し、自分にできることを考える。
必要なら誰かの力を借りる。
板挟みに悩んでいる管理職の方にとって、この記事が少しでも考えを整理するきっかけになればと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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