AI翻訳や生成AIがここまで身近になってくると、
「これからの時代、本当に英語を勉強する必要があるのだろうか」
と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。
分からない英文があればAIに訳してもらえますし、英語のメールも文章を考えてもらえる時代です。
スマートフォンや翻訳機器を使えば、日本語で話した内容を英語に訳して音声で伝えることもできます。
私自身も、AIがこれだけ進化した今、時間をかけて英語を学んだり、TOEICを受験したりする意味はどこにあるのだろうと思うことがあります。
特に大学生や、これから就職について考え始める人であれば、
「TOEICの点数を取って何になるのだろう」
「TOEICを勉強しても、英語を話せるようになるとは限らないのでは?」
「それなら、ほかの資格や自分の専門分野を勉強した方がいいのでは?」
そんな疑問を持っても不思議ではありません。
そこで今回、AIが普及している現在でもTOEICを学ぶ意味があるのか、あらためて調べてみました。
調べていく中で感じたのは、TOEICが必要か不要かという二択ではなく、必要とされる英語力の程度が、人によってこれまで以上に分かれていくのではないかということです。
簡単な翻訳や英文作成なら、AIに助けてもらえる場面は増えています。
一方で、就職や進学でTOEICのスコアそのものが必要になる人もいます。
さらに、仕事や研究で高い英語力が必要になる人は、TOEICの点数だけでは足りません。
つまりこれからは、
「英語を勉強するべきか」ではなく、「自分にはどこまでの英語力が必要なのか」
を考えることが、これまで以上に重要になるのではないでしょうか。
この記事では、主にTOEIC Listening & Reading Test(以下、TOEIC L&R)について取り上げます。
AI時代にTOEICを学ぶ意味はどこにあるのか。
そして、自分はTOEICを勉強した方がいいのか。
現在のAIやTOEICの利用状況を調べながら考えていきます。
AI時代にTOEICは意味ない?英語力とスコアの役割を分けて考える
AIがここまで便利になると、
「もう英語を勉強しなくてもいいのでは?」
と思う人もいるでしょう。
英文を読めなければAIに訳してもらえますし、英語のメールも作ってもらえます。
昔よりも、英語が分からなくて困る場面はだいぶ減ってきたように感じます。
では、TOEICも必要なくなったのでしょうか。
ここで少し分けて考えてみます。
たとえば、海外のWebサイトを読みたいとします。
AIに翻訳してもらえば、日本語で内容を理解することができます。
これは「AIの力を借りて英語を理解する」ことです。
一方で、英文を自分で読んで理解できる人もいます。
これは自分自身の英語力です。
そしてTOEICは、その英語力の一部をスコアという数字で示すための試験です。
似ているようですが、この3つは同じではありません。
TOEIC L&Rが測るのは聞く・読む力
この記事で主に取り上げるTOEIC L&Rでは、
英語を聞く力と読む力
を測ります。
IIBCの公式情報によると、試験はリスニング100問、リーディング100問の合計200問。
結果は合格・不合格ではなく、10~990点のスコアで表示されます。
ここで知っておきたいのは、TOEIC L&Rでは英語を話す力や書く力を直接測っているわけではないことです。
TOEICには、SpeakingやWritingを測る別の試験もあります。
そのため、
「TOEICで900点を取れば、英語で何でもできる」
というものではありません。
反対に、就職や進学でTOEIC L&Rのスコアを求められているのであれば、AIを使って英語を理解できることだけでは、そのスコアの代わりにはなりません。
まず、
AIを使えること、自分自身に英語力があること、TOEICのスコアを持っていることは、それぞれ役割が違う。
ここを分けて考えると、AI時代のTOEICについて少し見えやすくなります。
AI翻訳によって英語を自力で使う負担は減っている
少し前まで、英語の文章を読むには、自分で単語を調べたり翻訳サイトを使ったりする必要がありました。
しかし今では、英文をAIに入力すれば、日本語に訳してもらうことができます。
こちらが伝えたい内容を日本語で入力して、英語の文章を作ってもらうこともできます。
そう考えると、
「以前ほど英語を勉強しなくても何とかなるのでは?」
と思うのも無理はありません。
実際、AIや翻訳技術の進歩によって、英語を自分だけで何とかしなければならない場面は少なくなってきていると思います。
翻訳・英文の下書き・情報収集をAIに手伝ってもらえる
たとえば、海外のWebサイトを読みたいとき。
分からない部分を日本語に訳してもらえば、内容をつかみやすくなります。
英語でメールを書く必要があれば、日本語で伝えたいことを入力して、英文の下書きを作ってもらうこともできます。
海外の情報を調べるときに、英語の記事を読む手助けをしてもらうこともできるでしょう。
英語が得意ではない人でも、以前より海外の情報に触れやすくなったのは大きな変化だと思います。
もちろん、何でもAIに任せれば大丈夫という話ではありません。
旅行先で簡単な内容を確認する場合と、仕事で重要な契約内容を確認する場合では、求められる正確さが違います。
AIだって間違うことがあります。
それでも、
「英語ができる人に頼らなければ何もできない」
という場面が以前より少なくなっていることは、実感している人も多いのではないでしょうか。
米国では機械翻訳によって外国語スキルの需要が変化した研究もある
こうした変化は、単なる感覚だけでもないようです。
Oxford Martin Schoolが2025年に紹介した研究では、アメリカの695の地域労働市場を対象に、機械翻訳の普及と仕事への影響を調べています。
2010年以降のGoogle翻訳の普及などをもとに分析したところ、機械翻訳が広く使われるようになった地域では、翻訳者の雇用が減る傾向が確認されました。
さらに求人についても、スペイン語、中国語、日本語、フランス語、ドイツ語など、調査した外国語スキルへの需要が減る傾向が示されています。
ただし、この研究はアメリカの労働市場を調べたものです。
現在の生成AIが、日本人の英語学習やTOEICをどのように変えるのかを直接調べたものではありません。
そのため、
「AIがあるから、これから英語は必要なくなる」
とまでは言い切れません。
それでも、外国語を使う仕事の一部を技術が補えるようになることで、外国語スキルに求められる役割が変わる可能性は見えてきます。
ここは、AI時代のTOEICを考えるうえでも無視できない変化だと思います。
就職・進学ではTOEICのスコアが今も使われている
AIによって英語を使う負担が減ったとしても、TOEICのスコアそのものを求められる場面は今もあります。
分かりやすいのが就職や進学です。
ただ、実際に調べてみると、企業によってTOEICの扱いはかなり違います。
TOEICを求める企業もあれば、基準を設けていない企業もある
たとえばANAの2027年度新卒採用では、客室乗務職について、
TOEIC600点程度、またはGTEC Business公開会場版-LR260点程度以上の英語力が望ましい
とされています。
一方、ソニーの新卒採用では、応募時にTOEICやTOEFLの基準点を設けていません。
ソニーはグローバルに事業を展開しており、配属先によっては英語を使う機会があります。
それでも、応募時に一律のTOEIC基準を設けているわけではありません。
この違いは、今回の記事を考えるうえで面白いところだと思います。
「大きな会社へ就職したいならTOEICが必要」
「英語を使う会社ならTOEICが必要」
と単純には言えないということです。
もちろん、ソニーがTOEICの基準点を設けていない理由をAIの普及と結びつけることもできません。
ここから分かるのは、英語を使う企業でも、採用時に一律のTOEIC基準を設けているとは限らないということです。
反対に、ANAの客室乗務職のように具体的な目安が示されているのであれば、TOEICを勉強する理由はかなり明確になります。
AIが翻訳できるかどうかとは別の話です。
大学や大学院でもTOEICのスコアが使われている
進学でもTOEICのスコアが必要になる場合があります。
たとえば豊田工業大学の2027年度大学院修士課程の一般選抜では、英語の筆記試験を行わず、TOEICやTOEFLのスコアを英語の得点として利用します。
しかも、受験できる試験やスコアの有効期間などにも条件があります。
大学や大学院によっては、TOEIC L&RだけではなくSpeaking & Writingを求める場合もあります。
海外への留学や進学では、TOEFLやIELTSなど別の試験が必要になることもあります。
つまり、
「英語の資格なら、とりあえずTOEICを受けておけば大丈夫」
とも言えません。
ただ、逆に考えれば、希望する進路でTOEICのスコアが必要なら、その人にとってTOEICを勉強する意味は今でもはっきりしています。
AIが進化しても、ここは変わらない部分でしょう。
英語力とAIを組み合わせる価値はどこにある?
では、TOEICのスコアを求められていなければ、自分自身で英語を勉強する意味もなくなるのでしょうか。
私は、そこも少し違うと思います。
AIに助けてもらいながら、自分でも英語が分かる。
この組み合わせには、まだ十分な価値がありそうです。
AIが出した英語を自分でも確かめられる
AIに英文を翻訳してもらえば、大まかな内容を知ることはできます。
ただ、
「本当にこの意味で合っているのかな?」
と気になることもあるでしょう。
2026年にIIBCが行った調査では、英語コミュニケーションで生成AIを使った経験がある20~50代1,032人のうち、71.3%が、AIで作成・翻訳した英語が相手に正しく伝わっているか不安に感じたことがあると回答しています。
特に、
「表現やニュアンスが自然なのか」
「相手に失礼な文章になっていないか」
といった点に不安を感じている人が多くいました。
もちろん、これはTOEICを運営するIIBCによる意識調査であり、英語を勉強すればAIの間違いを防げることを証明した調査ではありません。
それでも、AIを使っている人自身が「これで本当に合っているのか」と感じていることは分かります。
自分でも少し英語が分かれば、元の英文とAIが出した文章を見比べる手掛かりにはなります。
専門分野に英語が加われば触れられる情報も増える
英語そのものを仕事にしなくても、英語が役立つ場面はあります。
ITを勉強している人なら海外の技術情報を読む。
研究をしている人なら海外の論文を調べる。
趣味について海外のWebサイトやSNSを見ることもあるでしょう。
もちろん、これらもAIに翻訳してもらうことはできます。
ただ、自分でも英語を読めれば、原文を確認しながらAIを使えるようになります。
海外の人と直接やり取りすることになれば、自分自身の英語力が役立つこともあるでしょう。
英語力が評価される場面は今もあります。
ただ、AIで補える範囲が広がったことで、自分自身がどの程度まで英語を使える必要があるのかは、仕事や目的によってより差が出てくるように思います。
自分が学んでいることや仕事にしていることがあり、その中で高いレベルの英語を使う機会が多い。
そんな人ほど、英語をより深く学び、読む・聞く・話す・書く力を身につける意味も大きくなってくるのではないでしょうか。
英語が分かってもAIの間違いを必ず見抜けるわけではない
一方で、
「英語を勉強すればAIの間違いを見抜ける」
と考えるのも少し違います。
たとえば医療や法律、ITなどの専門的な内容であれば、英語が読めても、その分野について詳しくなければ間違いに気づけないことがあります。
日本語で書かれていても、自分が知らない分野の間違いには気づきにくいですよね。
英語でも同じです。
英語の知識。
その分野の専門知識。
そしてAIを使う力。
必要なものは、仕事や目的によって変わります。
ここまで考えると、
「AIがあるから英語はいらない」
でも、
「AIが間違うから英語を勉強しなければならない」
でもないことが分かってきます。
AI時代でもTOEICが必要になるのはどんな人?
ここまで調べてきて、私が一番気になったのはここです。
これからは、どのくらい英語を必要とするかによって、TOEICを学ぶ意味も変わってくるのではないか。
たとえば海外のWebサイトをたまに読む程度なら、AIの翻訳で十分な人もいるでしょう。
簡単な英文メールを書く場合も、AIに手伝ってもらえば困らない人もいると思います。
そういう人まで、長い時間をかけてTOEICの高得点を目指す必要があるのか。
私は少し疑問に感じます。
一方で、自分自身の英語力が必要になる人もいます。
海外と深く関わる仕事をしたい。
英語の資料を自分で読めるようになりたい。
大学院や研究で英語の論文を読み書きする。
英語で自分の考えを伝える。
そういう人なら、AIだけに任せるのではなく、自分自身の英語力を伸ばす意味も大きくなると思います。
TOEICのスコアそのものが必要なら受験する意味はある
一番分かりやすいのは、就職や進学でTOEICのスコアが必要な人です。
仮に志望先から600点程度を求められているのであれば、まず600点を目標にする理由があります。
では、そこから700点、800点、900点まで目指す必要があるのか。
ここからは、その人が何をしたいのかによって変わってきます。
さらに英語力を伸ばしたいのであれば、勉強を続ける意味はあります。
一方で、ほかに必要な資格や専門知識があるなら、そちらに時間を使った方がよい人もいるでしょう。
TOEICは高ければ高いほど、全員に同じ価値があるわけではない。
AIが英語の一部を補ってくれる時代だからこそ、この考え方は以前より重要になるのではないかと思います。
自分の英語力を伸ばしたい人にはTOEICが目標になる
TOEICのもう一つの意味は、自分の英語力を数字で確認できることです。
英語を勉強し直そうと思っても、
「今、自分はどのくらいできるのだろう」
というのは分かりにくいものです。
TOEICなら結果がスコアとして出ます。
最初に受けたときより点数が上がれば、自分が勉強してきた結果を一つの数字として確認できます。
特に、
「昔習った英語をもう一度勉強し直したい」
「聞く力や読む力をもっと伸ばしたい」
という人にとっては、一つの目標になると思います。
TOEICの点数が英語力のすべてではありません。
それでも、
「自分の聞く・読む力が今どの辺にあるのか」
を見る一つの物差しにはなります。
高い英語力が必要になるほどTOEICだけでは足りなくなる
ここは少し面白いところです。
英語力を高めるほど、TOEICの点数も重要になるように思えます。
しかし実際に、高いレベルで英語を使うことを考えると、TOEIC L&Rの点数だけでは足りなくなってきます。
英語で自分の考えを説明する。
海外の相手と話し合う。
専門的な文章を書く。
質問にその場で答える。
こうした力は、TOEIC L&Rだけでは直接測れません。
より高い英語力が必要になる人ほど、
TOEICの点数に加えて、実際に英語を使う力や専門知識も必要になる
ということです。
TOEIC900点を取れば、どんな仕事でも英語に困らない。
そういう単純な話ではありません。
TOEICは英語学習のゴールというより、
自分の英語力を確認する一つの目安
として考える方が分かりやすいのかもしれません。
自分にはどこまでの英語力が必要なのかを考える
今回調べた内容を簡単に整理すると、次のようになります。
| 自分の状況 | TOEICをどう考える? |
|---|---|
| 就職・進学でスコアが必要 | 必要な点数を目標にする意味がある |
| 聞く・読む力を伸ばしたい | 学習目標や成長を確認する一つの目安になる |
| 簡単な翻訳や英文作成ができればよい | AIで補える場面も多く、高得点を急ぐ必要はないかもしれない |
| 英語を仕事や研究で本格的に使いたい | TOEICだけでなく、話す・書く力や専門的な英語も必要になる |
| ほかに優先したい資格や専門分野がある | TOEICに使う時間と比べて考える |
大学生であれば、
「周りが受けているから」
「就活で何となく役立ちそうだから」
という理由だけで高得点を目指す必要はないと思います。
まず自分には、どのくらいの英語力が必要なのか。
そこから考えてみてもいいのではないでしょうか。
必要なところまで学ぶ。
さらに上を目指したければ学び続ける。
今は必要ないと思えば、別の勉強を優先する。
AI時代になったことで、TOEICの意味がなくなったというより、TOEICを何のために学ぶのかが、より重要になってきたと私は感じます。
まとめ|AI時代のTOEICは「何のために学ぶのか」が重要
今回は、AIが進化した今でもTOEICを勉強する意味があるのかを調べてみました。
AI翻訳や生成AIが身近になり、英語が苦手でも海外の文章を読んだり、英文を作ったりしやすい時代になっています。
実際、これまで人の英語力に頼っていた場面の一部を、AIが助けてくれるようになりました。
だから、
「これからも昔と同じように英語を勉強する必要があるのだろうか?」
と疑問に思うのは自然なことだと思います。
私も今回調べるまでは、AIがここまで進化すれば、TOEICの意味も少しずつ薄れていくのではないかと思っていました。
しかし調べてみると、TOEICそのものが意味を失ったというより、TOEICを学ぶ目的を以前よりはっきり考えた方がよい時代になったと感じました。
就職や進学でスコアが必要なら、TOEICを受ける意味はあります。
自分自身の聞く・読む力を伸ばしたい人にとっても、スコアは成長を確認する一つの目安になります。
一方で、簡単な翻訳や英文作成が目的であれば、AIに助けてもらうことで十分な場面も増えています。
その人まで、必ずTOEICで高得点を目指さなければならないとは思いません。
そして、仕事や研究で本当に高い英語力が必要になる人は、TOEIC L&Rの点数だけではなく、英語を話す力や書く力、さらに専門分野の知識も必要になってきます。
そう考えると、
「AI時代だからTOEICは意味がない」
とも、
「将来のために、とりあえずTOEICで高得点を取っておけばいい」
とも言い切れないのではないでしょうか。
AIによって英語を学ぶ意味がなくなったのではなく、
「何のために、どこまで英語を身につけたいのか」
を考えることが、より重要になったのだと思います。
自分に必要なTOEICスコアがあるなら、そこを目標にする。
もっと高い英語力が必要なら、さらに学ぶ。
今の自分にはそこまで必要ないと思えば、別の勉強や経験に時間を使う。
そんな選び方があってもいいと思います。
TOEICを受けるか迷っているのであれば、まずは「TOEICを受けるべきか」ではなく、
「自分は英語を使って、これから何をしたいのか」
そこから考えてみると、自分に必要な答えも見えてくるのではないでしょうか。

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